あれは確か社会人になりたての、右も左もわからないころのことだったと思います。
上司が主催の食事会がありました。もちろん私が一番下っ端で、緊張して臨んだことを覚えています。
食事がしばらく進んだとき、上司がふと言いました。「紹興酒を頼みましょうか」と。
それを聞いて私は大きな声でこう言ったのです。「それならここに置いてあります!」
周りの大人たちは一緒ぽかんとなってから、優しく教えてくれました。
「上司が頼もうとしたのは、紹興酒だよ。それは塩コショウね。」
社会人になりたての若い頃でしたから。ショーコーシュなんて単語を聞いてもピンとこないよ、そりゃ。
周りの皆さんが大人だったのが救いでした。
それ以来、私は紹興酒と聞くと必ず「塩コショウじゃないよ」とつぶやいてしまうようになりました。